焼身

2015年初冬。自死した父。自殺をやり遂げた父。傷を負ってしまった私たち家族。

2015年初冬。父、焼身にて自死をやり遂げる。

ショッキングな話(実話)です。
閲覧は自己責任でお願い致します。


自死遺族として思いを伝えていきたいと思っています。
残された者は苦しんでいます。
逝った者に罪はありません。














朝、母の「お父さんが燃えている」の一言で目が覚める。


外から爆発音が聞こえる。


私(男 20代 会社員)が飛び起き、外へ出る。


庭の物置から火の手が上がり、父が炎につつまれ唸り声を上げている。


いつから燃え始めたのだろう。


物置から凄い勢いで炎が出ている。


父はいつから燃えていたんだろう。


頭は黒焦げで衣服も燃え尽き、頭を抱え唸り、最期を迎えようとしている。


近づくが物置から凄まじい炎が上がり、父を助けようにも父に近づけない。


ホースを伸ばし父に水をかけようとするが、錯乱状態の父には意味がない。


悪いが父よ、もう無理だ。母の命を優先させるぞ?いいな?


母は呆然と姿の見えない父の名前を呼ぶ。


「母さん!!親父は助からん!!山に逃げるぞ!!」


ガスボンベに引火。


安全弁からガスが放出していた。


爆発する。


父よ。なるべく遠くへ離れろ。


はあはあと父が苦しそうに呼吸をしているのを見て、母を山へ逃がす。


このタイミングで119へ電話。


すぐ消防車が駆けつけ消火活動に入る。


ガスボンベ爆発。


ボンベが吹き飛び、家に燃え移る。


燃え移るが、すぐに消化。


安全を確認し現場へ向かう。


父は?


瀕死の状態で爆発点から離れていた。


なぜ、そこで正座をしてるんだ?


なぜ、こんな事をしたんだ?


近所の人たちが見てるぞ?


「おめー、なにしとんなら!」


「わしはもうだめだ」


救急隊員が父をタンカーで運ぶ。


母と私は警察に呼ばれ事情を聞かれ、親せきが父と病院へ行った。


病院から電話が入り、もう助からないとの事で母と私は病院へ向かった。


父の喉元にホースが入り、酸素マスクをつけ、無残な状態で集中治療室で寝ていた。


父は100%熱傷で人生の終わりを迎えようとしている。


もう意識も、痛みもないらしい。


私はなんで、安心したんだろう。


父が無残な最期を遂げようとしているのに、なぜ冷静になれるのか。


なぜ母、祖父、兄との今後の生の事を考えられたのか。


兄は県外で働いているので電話で事情を話す。


「間に合わんか・・・・ありがとうと伝えてください」


「親父。兄貴がありがとうって!!」





最期の時。


徐々に呼吸が少なくなってきているのが分かる。


心拍数も血圧も0に近くなってきている。


親父。お別れだ。


母は父の名前をただただ呼び続ける。


あなた達の永遠の別れの時。


目に焼き付ける。


11時49分。